Unlocking the Path to Negative Churn

ネガティブチャーンへ続く道

要約:SaaS企業が成長するにつれ、チャーンが重要な問題となる理由を図解します。 SaaS企業の成長を大幅に加速させる非常に驚くべき要因についても見ていきます。(この記事は、SaaS企業だけでなく、リテンションモデル事業を推進するすべての企業に有用です)

はじめに

SaaS企業が成長するにつれ、定期購買契約のベースが大きくなり、様々な要因によるチャーンの数字も増大します。チャーンに伴う収益の減少を補うために、さらに多くの新規契約を獲得する必要が生じます。その結果、成長スピードは大幅に減退していきます。このカラクリを説明するため、非常に単純なモデルを構築してみたので、その結果をグラフでご説明しましょう。このモデルでは、MRR(月次定期収益)はゼロスタート、初月に10,000ドルの新規契約を獲得、その後は毎月2,000ドルずつ新規契約が増加する、という前提です(下記グラフの青い点線)。



赤い線と黄色い線は、カスタマーの契約解約に伴い失われる収益(チャーン)を示しています。 すなわち、毎月2.5%、及び5%のチャーンによる影響を示しています。

このグラフを見ると、スタートアップの初期段階では、チャーンはそれほど大きな数字でないことがわかります。しかし、5年目の終わりに近づくにつれ、チャーンは、低い解約率(2.5%)でも、新規契約で賄うのは非常に難しい水準(月6万ドル)になり、高い解約率(5%)の場合は更に状況が悪化(月9万ドル)します。

下記グラフは、各シナリオのMRR(月次定期収益)総額での影響を示しています。

ネガティブチャーンの影響

SaaSやその他のリテンションモデルでは、ネガティブチャーンと呼ばれる状況を実現することが可能です。 ネガティブチャーンは、チャーンに伴う減少収益を、既存顧客へのエクスパンション/アップセル/クロスセルに伴う増加収益が上回った場合に生じます。下記グラフは、新規契約に加え、既存顧客からの毎月2.5%の増加収益を獲得した場合を示しています(緑の線)。

結果はかなり衝撃的です。 既存顧客からの増加収益は大きくなり始め、5年目の終わりには毎月18万ドル近く貢献します。 MRR総額ではどれだけ影響が生じるかみてみましょう(下記グラフの緑の線)。

素晴らしい結果です。チャーンが2.5%の時よりも3倍近く大きなビジネスに成長します。明らかに、ネガティブチャーンを獲得することは、成長する上で最も強力なアクセルの1つと言えます。ただし、ネガティブチャーンを達成するのは大変難しいので、ネガティブチャーンは無理でも、チャーンを0%にできたらどうかと疑問に思いますね。下記グラフの点線をご覧ください。

チャーン0%の線は、黄色の線(チャーン2.5%)よりも約6割高いことがわかります。

ネガティブチャーンをどう実現するのか?

ネガティブチャーンを実現するには、次の3点のうち1つ以上を達成する必要があります:

・エクスパンション(既存プロダクトからの収益拡大)

時と共に増える利用基準に基づき料金が上がる価格モデルを使うことで最も効果的に達成できます。 例えば、Dropboxはより多くのストレージを使用するほどより多くの料金を請求します。 Eメールのマーケティング会社は、Eメールのリストが増えるほどより多くの料金を請求します。価格軸をどう適切に設計するかについて更に考えたい方は、別の記事「スケールする価格設計:SaaSの収益を上げる重要なツール」をご参照ください。

・アップセル

既存顧客に、より高度な機能をもつ高価格帯プロダクトへアップグレードしてもらいます。

・クロスセル

既存顧客に、追加で他のプロダクトまたはサービスを契約してもらいます。

ネガティブチャーンの時にLTVをどう計算するのかに関しては、別の記事「真のライフタイムバリュー(LTV)はいくら? – DCFを使えば答えが分かります」をご参照ください。

エクスパンション/アップセル/クロスセルは同じ営業部隊で良いのか?

固く速攻性あるルールではありませんが、私は通常、営業部隊は、新規顧客を追うハンターと、既存顧客からの収益拡大に取り組むファーマとに分けることをお勧めします。これには2つの理由があります。

・フォーカス:もし私が営業マンで、収益を増やすためのコールを既存顧客にするか新規顧客にするか選べるなら、既存顧客を選択します、なぜならそれが最も簡単だからです。 つまり、両方を担当すれば新規顧客にフォーカスすることは難しくなるのです。

・多様なスキルセット:収益拡大に必要なスキルセットは、カスタマーがプロダクトを非常に上手く活用するのをサポートする方法です。これは、営業に関わるススキルセットというよりも、コンサルティング、カスタマーサービス、プロダクトエキスパートに関わるスキルセットです。

契約数を規定する諸要因を追跡する方法

あなたのSaaS企業が収益拡大する力があると仮定すると、ネット契約数は次の3要素で決まります:

各要素をそれぞれ分けてトラックすると以下のような図になります:

ネガティブチャーンにいつ取り組むべきか?

私の記事の読者の皆さんは、創業間もないスタートアップの方が多いですが、皆さんには、アップセルやクロスセルのために複雑な価格スキームやプロダクトバリエーションの開発に取り組まねばならない、という印象を持って欲しくはありません。創業後の12〜24ヶ月の間は、そういう検討自体が時期尚早です。この時期は、より多くのカスタマーにプロダクトをしっかり使いこなしてもらうこと(アダプション)が何より重要で、そのためには、非常にシンプルな価格設計が最も適していることが多いのです。

しかし、初期段階のスタートアップでも、チャーンを減らすことには全力で取り組むことを私は推奨します。チャーンが高いということは明らかに、あなたのプロダクトがお客様のニーズや期待を満たしていない、ということを意味しています。そしてそれを放置することは、事業で長期的に成功するための方程式になりえません。

チャーンを減らすのに役立つトピックス:

  1.  既存顧客に電話する

あなたの会社が、チャーンが非常に高い初期段階のスタートアップなら、まず最初にすべきは、解約した顧客に電話して理由を聞くことです。そして私は、起業家(またはCEO)こそがそうすることを勧めます。なぜなら、彼らこそが、顧客の声に基づいてプロダクトのビジョンやサービスの内容を変える力をもつからです。解約した顧客から話を聞くことは、それくらい重要なことであり、他の人へ委任できる仕事ではありません。電話で話すことで、あなたのプロダクトがそもそも顧客の抱える問題を解決しないものなのか、それとも顧客がプロダクトの活用で問題を抱えているのかなどを理解できます。そうして、プロダクトを変えたり、またはプロダクトの実装をサポートする方法を変えたりすることで、チャーンを改善できることはよくあることです。

  1.  カスタマー・エンゲージメントを測る

皆さん、「カスタマーのハピネスを測れ」というメッセージをよく耳にすると思いますが、実際それをするのはとても難しいです。私は、そうする代わりに、あなたのプロダクトとカスタマーの関与度を測定することをお勧めします。具体的には、プロタクトに主要機能を持たせ、その機能を使用するたびにカスタマー・エンゲージメント・データベースにログエントリを送信するのです。そして、それぞれのイベントに加重値を割り当て、カスタマー・エンゲージメント・スコアを算出するのです。そのスコアを見れば、どのカスタマーがプロダクトの機能をうまく活用していて離脱の可能性が低いか、またはどのカスタマーが離脱リスクが高いか、を理解することができます。そのスコアに基づき、サポート担当者と連携して、高リスクのカスタマーに対しプロダクトをより活用できるよう支援や助言をしたり、Eメールを送ったり、電話をしたりすることができるのです。(このトピックに関する別のブログ記事「カスタマー・エンゲージメントの測定 ーコンバージョン増加&チャーン低減」もご参照ください)

  1.  カスタマーを釘付けにするプロダクト特性を知る

HubSpotは創業初期に相当高いチャーンに苦しみました。理由は、彼らの初期プロダクトがSEOにフォーカスしていたため、サイト検索の最適化を終えたカスタマーは、もうそのプロダクトを使い続ける必要がないと思うからでした。HubSpotは、カスタマーが使い続けたいと思うにはどのような機能を追加すべきか考えました。仮説の1つは、ユーザーの日常ワークフローの中核部分で利用されるプロダクトになること、もう1つは、重要なデータの貯蔵庫になることでした。 一旦、データの保存システムになれば、別のサービスへ切り替えるのはずっと難しくなります。

あなたのプロダクトのどの機能がカスタマーを釘付けにするのか理解していますか?それが分かったなら、カスタマー・エンゲージメントの測定値を使い、どの顧客がその機能を使用していないかを確認するのです。彼らは、チャーンのリスクが最も高いカスタマーです。

  1.  解約を申し出るカスタマーに最高の営業マンを割りあてる

解約しようとしているカスタマーを解約から救うことは可能です。しかし、良い結果を達成するには、最高の営業スキルが必要です。

  1.  長期契約の可能性を探る

ここまでの議論は、カスタマーが月次契約を結ぶことを想定しました。チャーンを減らす1つの方法は、より長期の契約(通常、6か月または12か月)を促すことです。長期契約は、プロダクトへのコミットメントが高く、しっかり実装して成果を実現するための時間もあることから、チャーンを減らす効果が見込めます。デメリットは、営業活動を阻害することです。従い、最も良い方法は、最適レベルを見出すためのテストをしてみることです。テストと位置づければ、営業に長期契約を強制せずにもすみます。

  1.  チャーンと相関関係にある要因を見つける

例えば、もしあなたのカスタマーに小企業も大企業も含まれているなら、小企業カスタマーが大企業カスタマーに比べチャーンが高いかどうかをチェックすることができます。そして収益性の高いタイプのカスタマーに、より多くの営業&マーケティング活動を集中させることができます(CACとLTVの両方を考慮して)。また、ある垂直領域/リードソース等のカスタマーはチャーンが高い傾向があるかもしれません。こうして調べていくと、どのカスタマーはプロダクトフィットが不十分だとか、プロダクトをカスタマーのニーズに合うよう変更する必要があるか、などがわかります。

小規模企業向けのビジネスほどチャーン防止は難しい

その理由は、小規模企業ほど廃業するからです。物事がうまくいかない時のコスト削減も早いです。加えて、小規模企業は特定サービスに対する予算に明確な上限を設けていることが多いため、ネガティブチャーンを実現するのは更に困難を極めます。

バリュエーションへのチャーンの影響

もしあなたが、VCへ働きかけているSaaS企業なら、たとえ創業初期の段階であっても、VCはチャーンの数字に細心の注意を払うものと思ってください。彼らは、プロダクトフィット/マーケットフィットが良いかどうかどうかを測る重要な指標としてチャーンの数字を必ずチェックします。

ウォールストリートと公開株式の投資家は、SaaS企業におけるチャーンの重要性を既によく理解しています。ある大手主要投資銀行が、公開会社のSaaS企業の評価を押し上げる要因について論じた素晴らしい調査レポートを公表しています。それによると、収益マルチプルに影響を与える最も重要なファクターは成長率だが、次に重要なファクターはリテンションとアップセルであると明示しています。同分析によると、リテンションが2%高ければマルチプルは20%高くなり、アップセルが2%高ければマルチプルは28%高くなります。

ネガティブチャーンの時にLTVをどう計算するのかに関しては、別の記事「真のライフタイムバリュー(LTV)はいくら? – DCFを使えば答えが分かります」をご参照ください。

SaaS企業の指標とベンチマークに関しては、「チャーン解読:同指標の測定とベンチマーク」をご参照ください。

About the Author

David Skok

Stay updated

Related Posts

Send this to a friend